リンパ浮腫治療 ~スキンケア~
リンパ浮腫の治療は、4つの重要な治療があります
今回はその1つ、スキンケアについてお話します
スキンケアという言葉は顔とかの美容でよく使われているイメージがありますが、わかりやすく言うと「お肌のお手入れ」という意味で、肌の状態を良くすること全般に使われます
リンパ浮腫の治療では、しみやしわなどの改善はしません(-_-;)
ここでいうスキンケアは、皮膚を清潔にして乾燥を防ぐことで、外からの刺激から肌を守ることです!
皮膚のスキンケアをするときに皮膚の状態も観察することで、ケガや病気を早期発見して早く治療をするのも重要です
目次
どうしてスキンケアが必要なの?
リンパ浮腫の方は皮膚の状態が乾燥しやすく、傷つきやすい、繊細な皮膚をしています
皮膚が繊細なので、普通の丈夫な皮膚ではちょっとのひっかき傷や虫刺されなど、たいしたことないことも炎症が起きやすく、赤くなったり腫れたり、ひどくなると蜂窩織炎(ほうかしきえん)という皮膚の病気になってしまうこともあります
炎症が原因で浮腫が悪化することもあるので、日々の注意と観察が必要なんです
まだ、リンパ浮腫を発症していないけれど、浮腫になるリスクがある方も炎症や傷がきっかけで発症することもありますので、発症した方と同じように注意していくことをお勧めいたします
皮膚を守るために、清潔にして保湿剤を塗りましょう
皮膚の状態を見よう
浮腫が起きている場所とその周りを見てみましょう
- 肌の色や、触った状態の変化
- 一部分だけ赤くなっていたり、茶褐色になっていないか
- 触って一部分だけ固くなっていたり、指で押すとズブズブとゆっくりと引っ込んで指の跡がついていないか
- 皮膚が乾燥してかさついていないか
- 炎症が起きていないか
- 炎症について、詳しくはこちらをご覧ください
- 蜂窩織炎になっていないか→すぐに皮膚科に行きましょう
- 傷、虫刺されなどの外傷
- 爪のひっかき傷→爪は常に短く切りましょう(できたらヤスリで滑らかにします)
- 虫刺され
- 草かぶれ
- あせも
- 外傷を防ぐには長袖や長ズボンで皮膚を出さないようにしましょう
- 圧迫療法をしていると、暑いのであせもが出やすくなります、はずしたときは流水で洗うか、やさしく濡れタオルで拭きましょう
- 痛みやしびれ
- リンパ液が滞っていると痛みやしびれが出ることが多いです(特にピリピリする方が多いです)
- 違う原因で痛みやしびれが出ている場合もあるのでリンパセラピストさんに相談しましょう
- リンパ節が腫れていないか
- リンパ液の流れが悪いとリンパ液が溜まってしまいます
- 炎症が起きて腫れていることもあります
- サイズ(周径)が大きくなっていないか
- 同じ場所、メジャーの締め付け具合も同じように測りましょう
- 面倒なので、毎日ではなくてもいいです、週に一回とかでもいいです、気になった時や皮膚に異常が出た時にはその都度測りましょう
- ウイルス感染
- 体内に風邪やコロナウイルスが入って炎症をおこすこともありますので、手洗いうがいをしましょう
- 目や鼻、口からウイルスが入ることが多いので顔を触るときは手洗いをしてからにするといいと思います
- 人と会うときや人ごみに行くときはマスクをしましょう
- その他、いつもと違うところがないか
- 毎日見ていると「あれ?昨日と違う??」ということがわかるので早期発見できます
- 気にしすぎると不安になるし、負担が大きくなってしまうので、「今日も大丈夫という確認」です、安心するために行いましょう
皮膚を清潔に保つ
- お風呂
- ボディソープは子供でも使えるような優しい成分のものを使うといいと思います
- 泡をしっかり泡立てて、浮腫のある部分は手でクルクルとやさしく撫でて洗いましょう(スポンジやタオルは皮膚が傷つく可能性があるので✖)
- 軟膏などを塗っているところは落ちづらいのでやさしく念入りに洗いましょう
- 流し忘れがないように、流水で泡が残らないようにしっかり流しましょう
- 保湿クリーム
- 乾燥や角化(固くなること)を防いだり、皮膚のバリア機能を高めるために塗ります
- 刺激の少ないもの、安全なものを選びましょう(水溶性のセラミド配合をオススメします)
- お風呂上りはすぐに塗る
- 成長ホルモンが夜中に分泌するので、寝る前に塗るとホルモンが新陳代謝を活発にさせるので効果的です
- しっかり保湿をしようと頑張るあまり、塗りすぎることがありますが、塗り過ぎは汚れの原因になります、適量を塗りましょう
皮膚を守る
- 爪
- 深爪にならない程度に短く切りましょう
- 角があると皮膚を傷つけてしまうので、ヤスリで滑らかにするといいです
- ささくれも傷つけてしまうので処理しましょう
- 虫
- 虫に刺されそうな場所に行くときは、長袖、長ズボンを着用、首にもタオルを巻くとか皮膚を出さないようにしましょう
- 虫よけグッズも上手に利用しましょう
- 草
- 山登りやキャンプなど自然の多いところに行く場合は、長袖、長ズボンを着用、首にもタオルを巻くとか皮膚を出さないようにしましょう
- 日光
- 長袖、長ズボンを着用、首にもタオルを巻くとか皮膚を出さないようにしましょう
- 日光湿疹から炎症をおこすこともあります
- 直射日光の強い日差しは避けましょう
- ペット
- ペットのひっかき傷に注意
- 冷暖房
- 冷暖房で乾燥が進みます
- 暑すぎると汗をかきます
- こたつや電気毛布の長時間の使用は熱の刺激が強いので避けた方がいいです
- 直接皮膚を冷やしたり、温めたりしないようにしましょう
- 下着
- きつい下着は締め付けが強いので、着けないでください
- 素材も柔らかいものにしましょう
- アクセサリー
- 時計やアクセサリーは浮腫のところには着けないでください
- 除毛や脱毛
- 除毛クリームや脱毛剤は皮膚への刺激が強いので使用しないでください
- カミソリで剃るのも傷がつくので剃らないでください
浮腫のあるところは毛深くなって気になりますよね
これは体が皮膚が弱っているので少しでも体を守ろうと毛をはやして保護しようとしている防衛反応です、気になると思いますが温かい広い心で受け入れてほしいと思います
私が使っているオススメの保湿剤
普段、患者さんに使っている保湿剤をご紹介します
これじゃなかったらダメということはないし、他にもいい保湿剤はたくさんあるので、あくまでも私が使っているものです、参考までにご覧ください
- ベーテル+さんの「ベーテル保湿ローション」
- 花王株式会社さんの「キュレル」の乳液
- くらしリズムメディカルさんの「ヒルロインクリーム」などのヘパリン類似物質クリーム
浮腫のところ全体に使っているのはベーテルです(右の写真)
伸びもよく、ワンプッシュで片手、2プッシュで片足の全体に伸ばすことができ、スーッと広がって浸透していきます、ある程度のとろみもあるので浸透しても表面はしっとりしたままなのがいいです
でも普通の店舗では売られていないので、購入したい方は浮腫治療をしている病院やセラピストのいる治療院など、ご自身の浮腫治療の担当者にご相談してください
油断して在庫がなく、ベーテルを切らしてしまった時はドラックストアでキュレルの乳液を買ってベーテルが届くのを待ちます、キュレルはベーテルよりとろみが少ないので浸透はこちらの方が早く、表面はすぐにサラッとします、市販のクリームとしては数少ない浮腫の方にも安心して使っていただけるものです
ベーテルもキュレルもどちらも保湿効果が高く安全で素晴らしい商品です
でも予備は常に準備しましょう(;^ω^)
治療をしている時に、皮膚が固いところや、色が変わっているところなど、部分的に塗るのが、ヘパリン類似物質配合のクリームです、保湿効果が高く、血液量を増やし痛みや炎症を抑える効果や傷跡を早く治す効果があるので、ベーテルを全体に塗った後に気になるところに塗っています
通常は、患者さんが普段使っているのを持ってきてもらって塗りますが、持っていない方は当院で準備したヒルロインクリームを塗っています
最後に
いろいろ書いてしまいましたが、あれもダメ、これもダメ、と注意することばかりで気分がふさいでしまいますよね
でも、せっかく生きているんだから、やらないのではなく、これらを注意していろんなことにチャレンジしたり楽しいことをしてほしいです
浮腫はいくら注意していたとしてもなるときはなるし、例えば蜂窩織炎になったとしてもなる前と同じようにまで回復することもある、リスクはあるけど絶対に悪化するわけでもない
気軽に言うなと思われるかもしれませんが、恐れてばかりでつまらない人生を送るより、やれるときに気を付けて工夫をしてやりたいことをやれる人生を送ってほしいと思います